幼さとの戦い

 11月に入って6年生の子供たちの顔を見ていても、そんなに差し迫った感じになっていないと半ば「あせり」半ば「あきらめた」方もいらっしゃるのではないかと思います。子どもたちはまだまだ幼いので、すべてをなげうって受験に挑めるわけではありません。本人たちは精一杯やっていると思っているでしょう。だから腹がたって、お母さんが横にビターとついて、夜遅くまで勉強しているご家庭もあるかもしれません。

 ふとそんなことを思ったのは、実は今日、塾に出かけてくるまでの間に何人か、小学校受験の子供たちの姿を見かけたからです。スーツ姿のご両親、あるいはお母さんに手をひかれた「お受験スタイル」の子どもたち。6年後の姿もあまり変わらないなとつい思ってしまいました。

 しかし、実際には小学校受験と中学受験は明らかに違います。本人が試験でできなければ話にならない。つまり、子どもに力がついていないと道は開かないのです。お母さんが横について、「ああしろ、こうしろ」といってできたことが、果たして本番の受験でできるのか。その点を冷静に考えていないといけないのです。

 よく「家で勉強するとまだできるが、模擬試験に行くとぜんぜんだめ」という相談を受けます。それは本当に力がついていないといってしまえばそれまでなのですが、つまり「問題を自分で解決する能力」が備わっていないのです。

 「精神年齢が幼い」といってもいいかもしれません。いろいろなことをお母さんにしてもらった子供たちが果たしてプレッシャーのかかった受験会場で自分の力を発揮できるのか、考えてみてください。「何かしなければ」と思う気持ちはわかりますが、「与えてしまえば自分でとることをしなくなる」のが子どもなのです。

 その意味では、横についているばかりでなく、本人がどのくらいやれるのかをやや距離を置いて見てみることも大事なことでしょう。そして「できるようになったこと」をほめてあげることが必要です。ここからは子どもたちに自信を持たせなければなりません。「~ができない」ということに注目するより「~ができるようになった」を数えていってほしいのです。そしてほめてあげること、認めてあげることが多くなればなるほど、子どもの幼さが逆に武器になります。力以上のものを本番で発揮するのです。波に乗せるためには幼さは長所となります。

 しかしそれを生かすも殺すも回りの大人次第と言えるのです。

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