第55回 なぜ塾は過去問を始めるのが遅いのか

大手の塾の話を聞いていると、過去問のスタートがおしなべて遅いようです。

だいたい11月。つまり入試まで3ヶ月。で、その間は、当然オリジナルのカリキュラムで進むことになるから、みんないっしょ。
この「みんないっしょ」はほぼ、塾の都合といっていいでしょう。つまり、なるべくみんな同じに進めていかないと、事業としての効率が悪くなります。例えば学校別指導のクラスもだいたいは週1回。どこかの教室に志望者を集めて特訓するわけですが、しかし、週1回日曜日に行ったとしても、それ以外はまた同じカリキュラムを勉強することになるわけです。

過去問をやったって、今は、できない。それで自信をなくすよりは、もう少し基礎を固めてから。というのがよくある説明ですが、私はこれには異論があります。

というのは、中学受験の場合、高校受験と違ってすべてが独自入試。つまり、学校がそれぞれ入試問題を作るのです。ですから、難しい問題を少数出すところもあれば、標準的な問題をたくさん出すところもある、記述もあれば、選択もあり、作業があれば、知識があるという具合でじつにバラエティーに富んでいます。それをひとつのカリキュラムで進行させること自体に無理があるでしょう。ある学校を狙うのであれば、その入試問題にあわせた対策をそれこそ平日がんばらないといけないわけですが、実際には各教室でいろいろな出題傾向に対応できるわけがない。だからなるべく一体になって動かした方がいいという結論になるわけです。

そこそこ対応している子ならそれでもいいかもしれません。しかし、中学受験範囲は小学校5年から中学2年までの範囲。これを網羅すること自体がなかなか難しいわけです。だからある程度しぼる必要がある。でも塾ではなかなか対応してもらえない。とすれば家庭がその主導権をとらないと、子どもは遠回りをすることになります。

しかしそうなると塾は面倒になる。だから、先手を打ちます。これが保護者会。

「いいですか、過去問は指示があるまで手をつけてはいけません。」

って、それは誰のため?

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