高望み傾向

 ここ数年の入試で男子は、偏差値50以上の学校に3分の2の生徒が出願しています。もともと中学受験は子どもたちが自分の学力で受ける最初の入学試験ということもあり、どうしても高望み傾向が出てくるのですが、その状況は変わっていません。というよりは、最近はさらに拍車がかかってきたかもしれません。男子の場合は学校の数も女子に比べて少なし、だめなら高校受験という考えもあるからでしょう。

 例えば合格可能性が20%だったとして、受験するかどうか、というのは悩ましいところです。

 というのも入試に20%というのはありえない。合格か、不合格か、それだけです。したがって単純に確率の問題で考えれば、5人に1人は受かることになるわけだから、その1人になるのか、それとも落ちる4人に入るのか、ということになります。

 関東の入試では慶應中等部が2月3日に動いてから、2月1日から3日までの3日間入試という色合いが強くなりました。その貴重な1日に対してとるリスクとしては確かに高いと言えるかもしれません。が、一方で最初から狙って、学校別対策までやってくると、直前に落とすということはなかなかしんどい部分もあります。

 私は前から第一志望は変えず、安全圏はきっちり数字とおり、というお話しをしてきました。

 中学受験の場合、保護者のみなさんにも夢があるし、どうしても志望は高くなるでしょう。それ自体は大きな問題ではありません。狙うところは狙う、抑えるところは抑える、メリハリがしっかりしてればそれでいいのです。ただ第一志望に引きずられてしまって全部、実力以上の学校を受けてしまうことはあまり感心しません。

 中学受験は短期決戦ですから、ある意味勢いが大事です。しかも受験しているのは12歳の子どもたちですから、精神的にタフではありません。不合格が続けば、本人の力が出ないケースが考えられますし、逆に勢いがついてしまえば、波に乗って実力以上の力を発揮してくれることもあるでしょう。だから合格することを大事に考えおかないと戦略としては失敗です。例えば1月校で、行きたい学校に入ってしまえば、これはこれで勝負という面も出てくるでしょうが、そうでない限り2月1日から3日まで自分の実力以上の学校ばかりを受けるということは良い選択とは言えないでしょう。

 もちろん受験する学校にはご家庭なりの考え方があるでしょう。あるレベルの学校以上しか受けない、もしだめなら公立に進めばいい――これもひとつの考え方です。本人を含めてそういう考え方で臨むのであれば、それはそれでよいと思います。

 問題は、受験しているうちにだんだん子どもがかわいそうになってくるご家庭のケースです。あわてて受験できる学校を探してみる。でもその学校の対策をしているわけでもないし、本人もがっかりしているのでなかなか合格できない。かえって自信をなくしてしまうかもしれません。これはあまり良い受験法とはいえないでしょう。

 それにあまり知らない学校に入った後、その学校のことがいやでまた高校受験に回る子どもたちも少なくありません。一時の感情に左右されるよりは、最初からのプランを押し通した方が最終的には良いということが多いようです。

 だから事前の準備が非常に大切なのです。

 受験校の選択については保護者の判断が非常に重要になります。止めるべきはしっかり止めるべきだし、狙うところはしっかり狙っていい。その意味で、中学受験は親と子がいっしょにがんばらなければいけない受験であり、実際の結果もそのよしあしで大きく左右されるといってよいでしょう。

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