中学受験を始めるのはやはり親の意思が強いようです。兄弟が受験をしたので、自分も受験するのが当たり前だと思っている子はまだ良いですが、最近は一人っ子も増えてきているので、塾に行きなさいといわれるケースが多いでしょう。ところが子どもたちはまだ遊びたいし、サッカーや野球などスポーツやならいごとも続けたい。自然、受験勉強に身が入らないという子も少なくありません。
だから大手の塾の場合は、動機付けを親にもってもらうようにするのです。そのための手段がクラス分けテストです。
「良い学校に行くためには上のクラスにいないと」
「御三家に入るためには上の3つのクラスにいないと難しいみたい」
お母さんたちのネットワークでもこんな話が出てきます。
こういう話を聞かされると、お母さんとしては何とか上位のクラスに入れようと思うばかり、がんばってしまいます。クラス分けは点数で決まります。だからいい点がとれればいい、算数や国語はちょっと勉強したところであまり点数がとれないかもしれないけれど、社会だったら点数がとれるかも、そんなことで4年ぐらいから社会に力をいれてしまったりする。しかし、受験はまだ先の話です。いまからそんなに知識ばかり増やしたところで、すぐ忘れてしまうでしょう。本来ならしっかり基礎学力をつくっていかなければいけない時期なのに、全然別のことをしてしまう――これが現状なのではないでしょうか。
本来、勉強は「わかる」からおもしろいと感じるものなのです。テストも「できる」から楽しいわけで、「わからないこと」「できないこと」をやらされている限り、子どもたちの動機付けはできません。
中学受験をするのは子どもたちなのですから、子ども自身が勉強に向かう動機を作っていかなければなりません。しかし、それに失敗しているお母さんが意外に多いのです。子どもが中学受験に対して真剣になるのはせいぜい小学校6年生の秋ぐらいからです。このころになれば学校のクラスの友達からも「○○中学を受ける」という話が聞こえてくるので、「自分もがんばらないと」とようやく思いはじめます。それまでの間は、受験に関してはピンときていない子のほうが多いのですから、「中学受験はあなたのためでしょう?」といっても動機付けにはならないのです。
勉強の最大の動機付けは「わかる」「できる」と思わせることです。私は常日頃から「子どもはほめないと伸びない」とお話をしています。ほめるのはことばだけではなく、ごほうびもあれば効果的です。そんな高いものでなくてもいい、ちょっとしたごほうびが子どもたちにはうれしいものなのです。そうやって自分で勉強するくせがついてくれば、「勉強するのが当たり前」になってきて、「わかること」が楽しくなってくるはずです。
そしてここが大事なのですが、「わかるもの」だけを最初に与えるのがよいのです。そしてできたらほめる、そして次にまたわかるものを増やしていく。子どもたちの能力もそのとき受容できる力もそれぞれ違います。そこをうまくコントロールしていかないと、子どもは伸びません。3年生や4年生のころは、テストの成績よりもその点に注意しておく必要があるでしょう。子どもはおもしろいと思ったり、楽しいと思うことに対しては積極的な関心を示すものです。それを上手に引き出してあげることが、低学年では特に大事なポイントです。