第9回 勢い

■成績は、あまりふるわないのだけれど、この子はきっと合格するだろうなと思わせる子供たちがいました。

■ この子供たちを振り返ってみると、2つのタイプがあります。1つは、非常におとなしいし、あまりクラスで目立たないのだけれど、やるべきことはきちんとやるタイプ。こういう子供は、こちらが考えている通りにできるようになってきます。例えば、6年生の夏休みにはまず、算数の応用力をつけてほしいのですが、8月末には、結構難しい問題がたまにできるようになります。

■秋になれば、当然知識が増えてほしいと思うのですが、これもその通りにコツコツ、覚えるべきことを覚える。そして最後の時期には手をつけた問題は必ずできるようになってほしいのですが、その通りになって、これまでくれば、間違いなく第一志望に合格していきます。

■もうひとつのタイプは、あまり勉強しないのだが、「絶対に合格する」と言い張っている子供。親や、塾の先生はもっと志望校を下げた方がいいと思っているのですが、「絶対に受ける!」と言い張って聞かず、ガンとして言うことを聞きません。

■ただ、このタイプには見た目、同じですが、ぜんぜんだめなタイプが含まれます。それは、その意思が友達つきあいの中から生まれている子。友達がそうだから、僕もそうするというタイプは、秋になって、相も変わらず勉強しませんから、成績が上がらず、結局失敗に終わってしまいます。

■合格するタイプは、本人が本当に、その学校に行きたいと思い、秋を迎えて突然、勉強し始めます。12月くらいには、結構いい線までたどりつくようになり、そうするともう勢いがついていて、2月の本番には間違いなく合格しています。

■以前、教えていた子供で、幼い男の子がいました。絶対に第一志望は変えません。そして秋になると、案の定勉強し始めました。それでも11月の試験では、まだまだ合格ラインには程遠かったのです。ところが、ある日、同僚が「あの子、合格するかもしれない」と言い出しました。データーを見ている限り、まだまだという感じですが、この子もそのタイプかもしれないと思いはじめました。冬期講習を迎えて、「うん?確かにできるようになってる」と私も思うようになりました。それでも最初の成績があまりに低かったので、「いくらなんでも間に合わないだろう」と思いました。その状況は、1月も続き、成績上昇の勢いはあるが、合格ラインまではまだまだと思いました。しかし、結果は合格でした。

■「いくらなんでも」と思っているのは、大人だけの話。本人は絶対合格する気持ちでいました。その気持ちが勢いを出したのでしょう。毎年、模擬試験の結果を見ながら、「結局、これがあてにならないのが、おもしろいんだな」と思ったものです。子供の力を決して過少評価してはいけないのです。

(平成15年8月21日)

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