第28回 自学自習のすすめ

■私も中学受験をした口ですが、当時の中学受験はテスト会が中心でした。日本進学教室、四谷大塚進学教室が日曜日にテストをやり、受験生はそれに向けて勉強する。今とは違い氏名もどんどん発表されていましたから、誰ができるのか、他の生徒もよく知っていました。中学合格した後、「あいつが、そうか」などと妙に納得したものです。

■やがてテスト会に対応するために、いろいろな塾ができました。とはいっても、当時は単科の先生が授業をする小さな塾が多かったと思います。今、大手の塾といわれているところもスタートはそうだったと思います。やがて塾は総合サービス産業となり、すべての科目を指導するようになりました。結果として家庭の塾依存度は高まっていきます。

■さらの少子化が塾への依存度を上げました。子どもの数が少ないから、家庭で受験勉強がやりにくくなったのです。お母さんが家で「勉強しなさい」と言いつづけるよりは、塾に出してしまった方がら家庭内でギスギスしないでいいという気持ちが強くなったのです。通塾回数は週2回から3回、4回と増えつづけ、いまは5回と聞いてもあまり驚かなくなってきました。

■今の塾はサービス産業なので、この塾の進み方は非常によくわかります。ところがここでひとつ問題が出てくるのです。本当に子どもたちはそれでできるようになっているのかという点です。もちろん、できる子たちは育っています。本来、力のある子は多少の環境の違いはものともせず、できるようになっていくでしょう。問題はそうではない子たちの話です。

■この場合、その進歩は塾に依存するわけですが、私は本来、家庭に依存すべきではないのかと思っているのです。というのも、子どもたちはこれから成長するにつれていろいろな方向に進んでいき、当然、また勉強しなければなりません。今は受験ですから、受験塾というサービス産業がありますが、すべての範囲にそんな塾はありません。当然、自分でいろいろと苦労しながら、必要なことをマスターしなければならないのです。そのやり方を学ぶには、家庭で学習することが一番ではないでしょうか。自分でいろいろ苦労しながら、本を読んだり、問題を解いたり、そうすることで勉強の仕方がわかってくるのです。

■その意味で、私は当時、私たちがやったテスト会中心の学習の方が良いのではないかと思っています。今のお父さん、お母さんは多分、その経験者が多いのではないでしょうか。子どもたちの受験になったら、システムがだいぶ違っていると驚かれた方もいらっしゃると思います。塾が基本的に問題なのは時間を拘束されてしまうことです。テスト会であれば、家庭での勉強が中心ですから、子どもの資質や状況によって勉強方法を変えることもできますし、その方が実際には効率的、経済的になります。

■塾は便利なところ、役に立つところを利用すればよいのです。中心は家庭学習、そして塾やテスト会でのテスト、それを補うための授業という組み立てが私は一番いいのではないかと思います。ただ、当然、このやり方はお父さんやお母さんががんばらなければなりません。しかし、そのことが親にとってはとても良い経験になると思うのですが。

(平成16年10月20日)

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