第29回 4教科のすすめ

■近年、受験生の利便性を考えて、2教科、4教科の試験を選択できるようにする学校が増えていました。ところがこれから数年はこの選択制から4教科型へシフトする傾向が見られてくるだろうと予想されます。すでに2005年度入試から4教科に変更する学校は、立教池袋、東京女学館2次、芝浦工大2次などが発表されており、2006年度からは青山学院も算国100点、理社50点の合計300点満点の入試に統一されます。

■この原因は2つあります。ひとつは大学入試の制度変更に対応すること。センター試験が現在原則5教科7科目となり、6年後の大学受験に向けてやはり4教科で学習してきた生徒を取りたいということがひとつ。もうひとつは、学内格差をなくそうという意図。4教科を勉強してきた生徒と2教科だけを勉強してきた生徒では、やはり理科、社会の理解度は4教科生の方が上。したがって、その差をなるべく少なくするのは2教科入試による入学者を減らすということが必要だという考え方からです。

■現在の入試傾向を見ていると、大きく2つの流れに分かれます。ひとつは学校の人気が出てきて、入試がむずかしくなる傾向の学校。一方、その反対に、なかなか人気が出ないので、なるべく入試を多様化して、生徒を集めようとする学校。これまで1日だけの入試であったのが、2次を行う学校が出てきました。実際に、やや硬直化してきたのが、この入試変更によって学内が活性化し、非常に成功したところもあります。また入試を難しくする学校は、やはり4教科の内容を高度に出題してきていて、本当に力のある生徒をとりたいという意欲が見えます。

■この流れにしたがえば、やはり受験準備は最初から4教科である必要があります。ただ、理科、社会は最初のうち、どちらかといえば覚えなければいけない科目であり、塾の週例テストや月例テストの準備が負担になることもあるかもしれません。だからといって、4教科を早い段階から2教科に切り替えるのは、あまり利がありません。

■よくご相談をうけるのが、4教科をやる時間がない、だから2教科にしぼりたいという考え方。ただ、多くの場合、4教科勉強しない子は2教科でも勉強しないのです。理科、社会はこれまで塾でもある程度授業を聞いてきているわけですから、残りの問題はとにかく知識を正確に覚えるということにあります。ある意味こつこつやれば、誰でもできるという話でしょう。ところが算国というのは、やはり考える力、得点する力が問われるので、付け焼刃的に点数を伸ばせるものではありません。したがって、2教科にしぼったところで、あまり偏差値は変わらないというのが、今まで見てきた子どもには多かったと思います。

■ですから、私はあまり2教科への変更をさせませんでしたし、第一志望の変更もあまりしませんでした。もちろん、受験する学校によって柔軟に戦略は考えられるべきで、実際に1回も4教科の試験を受けないのに、4教科を勉強する必要はないわけです。

■ただ、これから受験準備に入る5年生以下のお子さんはやはり、4教科でしっかり勉強をしてもらいたいなと思います。理科や社会を勉強することは非常に大切なプロセスです。それを成績や偏差値で簡単にやめてしまわない方が、結局は良い結果につながっていくと思います。

(平成16年10月25日)

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