第93回 中学受験の学校選びと高校受験の学校選びの違い

    中学受験は、得てして高望み傾向にあります。
    全体の60%近くが偏差値55~60以上の学校を第一志望にするのです。正規分布から考えれば、偏差値60以上というのは、全体の16%弱にあたるので、60%が受験すれば、倍率3倍から4倍で推移することになる。だから、基本的に高校受験の学校選びと違います。
    高校受験は、最初から行くところが確保されているわけではない。だから、まず確実に行けるところを抑えた上で、チャレンジを考える。しかし、中学は義務教育ですから、公立はすでに確保されている。だからむしろチャレンジをすることの方に重きが置かれる傾向にあります。
    この傾向を「無謀」と考える向きがあるようですが、それは違うと私は思います。
    中学受験というのは、子どもたちが初めて、自分の力を試される。精神年齢で考えれば、まだ十分とはいえない年令での勝負です。先先にまだいろいろな可能性がそれこそ山のように残っている子どもたちですから、安全志向ばかりを優先する必要はない。
    私が「合格して失敗する子、不合格でも成功する子」というタイトルをつけたのは、中学受験の先にまだいろいろあるからです。
    合格しても、そこでまじめにやらなければ、先先、力はつかない。しかし、不合格で奮起し後に合格した子どもたちを抜き差っていった子はたくさんいます。その原動力は「挑戦した」ということであって、「挑戦する」気概がなければ、不合格で奮起することもない。
    安全志向は、高校受験が一番強いでしょう。大学受験というのは、最終段階だから、「浪人覚悟」という選択肢もあるが、さすがに高校受験で「浪人覚悟」はほとんど例がありません。結果として第一志望を落とす傾向が強い。
    だから、高校受験と同じ感覚で学校選びをする必要はないのです。
    データ的に見れば、当然、第一志望に対して楽勝という子は多くはない。だから合否ラインには非常に多くの子どもたちが並びます。1回の試験だから、うまく行く子も、いればそうでない子もいる。ただ、子どもたちの挑戦は始まったばかりであり、これが最終ではないのですから、結果は受け止めて次につなげればいい。むしろこの受験が「消化不良」にならないようにすることが大事なのです。
    抑えがほしければ併願校で調整すればいいのです。わざわざがんばってきた第一志望を落とす必要はない。狙うべきは狙う、抑えるべきは抑える。(別に抑えなければいけないということではありません。公立は確保されているのだから、最後はそこに行くという前提があれば、すべて挑戦でももちろんかまわない。)
    合不合3回が終わり、最終の学校選択の時期になりました。
    ご家族でよく考え、話し合われた上で、決めたらもう迷わないことです。こんなこと、迷い出したら、きりがない。じっくり考えて、決める。決めるまでは慎重でいいでしょう。しかし、決めたらもう後は対策にまっしぐら、でいいと思います。
    今日、私も6年生の保護者会ですが、お子さんの成長や教育にとって「良い受験」になるよう、しっかり考えてあげてほしいと思います。
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