■今年の中学受験の受験率は14.7%だったということが四谷大塚の資料で発表されました。私は15.5%くらいいくと思っていたので、あまり伸びなかったという印象があった一方で、しかし、今年の受験はどこで聞いても大変だったという感想が多かったので、不思議に思っていたのですが、何と今年の6年生の人口が増えていたのです。
■ 人数が増えて、受験率も1ポイント程度あがれば、これは難しくなります。今年の受験はやはり大変だったという印象はその通りだろうと思います。首都圏での受験生の総数は約43200名、昨年比7%増というのだから、大変なものです。さらに受験校数も増えました。平均で5.97校。実際に受験したということではなく、出願という意味ですがこれも随分大きな値です。平均で6校ということは、多い人は10校ぐらい受けているということです。受験料だけで入学金に匹敵するくらいなのかもしれません。
■一方、大学受験の方の発表もありました。久しぶりに週刊誌を買い込んで、比較してみたのですが、発表していない学校もありますから、推計とはいいつつ、やはり私立の躍進が目立ちます。東大の場合、今年は文Ⅰの定員が減少したために、非常に狭き門だったようです。それと近年の特徴は医学部の人気。医者は余っているのではないか?と思う部分もあるのですが、医学部の人気は相変わらずで、国公立の医学部はやはり狭き門のようです。
■入試が厳しくなるということは、子どもたちの学力差はさらに開く方向に進んでいるということになります。トップ校に行く子どもたちの学力はかなりのものです。近年、カリキュラムのスピード化と低年齢化が進んでいて、早くから受験勉強を始めている子どもたちが少なくありませんが、一方で受験をしなければ公立のカリキュラムのままですから、当然差は広がっていくばかりなのです。
■そうすると当然、公立教育の部分で非難がおこります。その結果がゆとり教育の議論につながりました。しかし、それが火に油を注ぐ結果になったのです。差の拡大を抑えようとして、かえって私教育と公教育の差がまた一段と広がっていきそうな勢いです。
■文部科学省は、前回の指導要領の改定の中で大きな方針の変更をしました。これまで、初等教育、中等教育をなるべく均一化していくという方針をやめて、個々の生徒に必要な教育を行うという指針です。この変更は良かったと思うのです。問題はそこから、具体的なプランをどうまとめていくかということに尽きます。しかし、週休2日制を急ぐあまり、その議論が十分でないまま、現在の指導要領の改定が行われたことに大きな問題があります。
■今後は私立も公立も自らの教育内容を吟味して、競争していかなければならないでしょう。その試みのひとつが公立の中高一貫教育校です。先日白鴎高校でその説明会が行われましたが、多くの保護者が参加し、その期待の大きさをのぞかせました。公立教育の質をどこまで上げることが出来るか、大きな転換点だと思います。
(平成16年3月21日)