第12回 イチロー考

■イチロー選手がシーズン最多安打を達成しました。日本人選手がここまで活躍すると、若いころは想像もつかなかったので、時代が大きく変化してきたことを感じます。ワールドカップに日本が出場するなんて、当時は考えてもみなかったことですから。

■アメリカのメジャーの選手は子どもたちに対する影響力をきちんと理解しています。ですから、よく子どもたちの前に出て話をしたり、イベントに参加したりしています。イチロー選手も話をしていましたが、その中で、非常にいい話だなと思ったことが2つあります。

■ひとつは、自分の好きなことを見つけて、ひとつひとつ努力をしていくことが大事だいう話。258安打というのは、毎打席の積み重ねがもたらしたものですし、ここまでくる間にイチロー選手は大変な努力をしているのですから、子どもたちは良い話を聞かせてもらっていると思います。

■もうひとつは、彼は道具を大事にしなさいと子どもたちに教えてくれています。グローブを、スパイクを自分でていねいに磨き、大事にすること、これができなければ野球はうまくならない、いや、ほかのことでも全部同じだと言っています。実際に彼は、本当に道具を大事にしています。壊れたら買ってもらえればいいと思っている子どもたちが多い中で、これも重みのある言葉です。

■イチロー選手はアメリカの童話にも登場します。太平洋戦争を経験した祖父が日本人が嫌いだったのに、イチロー選手の活躍を見て、日本人を好きになった。孫がそれを聞いて、「許す」ということを覚えたというストーリー。確かに全米のニュースを見ていると、多くの日本人選手の活躍は、日本人に対する見方を変えてきたように思います。

■子どもたちにとって、野球選手やJリーガーは憧れの的です。だからこそ、子どもたちに与える影響は大きいのです。より多くの選手が、そのことに気が付いてくれると、スポーツ界はさらに隆盛になっていくでしょう。Jリーグでも、プロ野球でも子どもたちに教える機会をたくさん作ってくれています。だから、選手一人一人の言葉も、非常に重いのです。

■その割に、オーナーや経営者のみなさんの発言は、どうも子どもたちに聞かせたくない言葉が多いようですが。

(平成16年10月4日)

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