第42回 受験は勝負事

    いよいよ入試が近づいてきました。同じ志望校をめざしてがんばっている子どもたちも試験が終われば、合格者と不合格者に分かれます。そういう意味では、やはり受験は勝負事だと私は思います。そのときの試験で、いい点がとれるかどうか、ということにかかっているわけで、受験準備はそのためにすべきことなのです。
    したがって、無駄なこと、無理なことをやっていても仕方がない。中学受験はやらなければいけない分量が多いので、どこを効率化して合格させることができるかという点に絞って考えていかなければなりません。その意味では学校の教育方法とはだいぶ違ってくるでしょう。
    今の受験産業は、どちらかといえば保護者の負担が軽くなるようにできています。保護者が家庭であまり面倒を見なくても済むように、家で勉強をたくさんしなくても済むように、ということで通塾機会も増えているわけです。しかし、それが本当の意味で効率化につながっているのかというと、私はそうではないと思っています。
    中学受験のメリットの一番は、保護者が受験にかかわりながら、受験のデメリットを減らすことにあります。小学校6年生といっても、まだまだ自分だけで判断できる範囲は小さいので、その分保護者がかかわることで子どもたちを守ってあげられるのです。例えば偏差値や順位というのは、単にその試験の結果に過ぎません。子どもの価値(?)を表すものではまったくないのですが、しかし数字は一人歩きします。子どもたちの中には、偏差値さえとればえらいんだ、みたいな考え方をする子もいるほどです。しかし、それでは子ども自身が方向性を見失ってしまう。偏差値がとれないからといって、だめな子ではない。これから成長する過程にあるわけだから、一回の試験の結果よりもこれから、どうするか?ということが重要です。だから保護者のフォローが必要になるわけですね。
    だから私は保護者の負担が軽くなるということは、子どもたちの負担が大きくなるばかりだと危惧しているのです。
    塾は、どうやったらこの子が、合格するか?ということを考えていくのが筋だと思うのです。土台、小学生が中2までの先取りをするわけですから、すべてをやろうとすることにすでに問題があります。先日、ある6年生が分数の計算を今、学校でやっているんだといっていましたが、中学受験の現場とは大きくかけ離れているのが現状なのです。だから、どの部分を削って、どの部分を強化するのか、塾や保護者が考えていって、子どもに無理をさせない方法をとらないと中学受験のメリットを享受できないと思います。
    最近はインターネットや動画の環境がよくなっているし、子どもたちもパソコンに慣れてきているので、こういう点での効率化も考えられるでしょう。あるいは学校別対策に集中するのもひとつの方法です。対策すべき学校は結局2~3校なのですから、すべてを網羅するという考え方はあまり得策ではありません。
    とにかく、がんばるんだでは意味がないのです。勝負事だから、どうやって勝つか、その戦略がないといけない。ただ、子どもたちに戦略を立てられる力はまだ、ありません。だから保護者が考えないといけないのです。塾は利用するものであって、塾にまかせきりにしていいものではありません。
    中学受験は親の意思だとお話しましたが、だからこそ、親はしっかり受験に関わって、子どもたちのフォローをしてあげてほしいと思います。
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