中学受験の変遷から思うこと

こんなに中学受験が大変になった一番の原因、それは1967年にさかのぼります。

ここで東京都立が学校群制度を始めた。学校群というのは、学区を地域で分けて都立高校は、その学区に住居がないと受けられない、というものです。それまで東京都立には日比谷を頂点とするトップ校が存在していたのですが、実はここに越境入学する全国の生徒たちがいたのです。その当時のことは庄司薫氏の小説に詳しいが、本当に全国から優秀な生徒が集まっていて、それで「都立?」はないだろう、ということになった。少なくとも都立高校は平準化すべきだということで、学校群が始まったわけですが、結果として、これは受験生が都立から私立に流れるきっかけになってしまった。この学校群が始まって以降、日比谷高校は東大合格者のトップ校から落ちました。

1965年の東大合格者では

1位 日比谷高校 2位 西高校 3位 戸山高校

だったのだが、10年後の1975年では

1位 灘 2位 東京教育大(現筑波大学)付属駒場 3位 麻布

ということになって、私立優位が明らかになってきます。1967年というと、45年前ということなりますが、この間、私立優位が続いていて、東京がそうなら、関西も、中京も、九州も、という流れになってきたわけです。

で、中学受験の塾という話になると、この40年の間に

テスト会→単科塾→総合塾

という流れになってきました。私の年代の方で、中学受験を経験された方はおおむね、テスト会出身者であろうかと思いますが、週1回テストを受けて、そのテストに向けて自分で勉強する、というスタイルでありました。このころは、あまり参考書や問題集もなかったので、自分で過去問をやったり、いろいろ工夫が必要であった。

そのテスト会の準備をするための塾というのが、生まれてきたのですが、その塾は基本的に単科塾が多かった。国語は国語の塾、算数は算数の塾に行く。つまり、自分の勉強の状況に合わせて、通う塾を変えることができたわけです。

やがてそれは総合塾に変わり、テスト自体は総合塾の中に飲み込まれる、という流れになっているといっていいでしょう。ということは、ある一定のシステムの中で受験をすることが、一般化されたということであって、子ども独自の工夫はあまり必要でなくなった、家庭が考えずとも塾が用意してくれるようになった、ということではないかと思います。

そして総合塾の時代になってからは、いわゆる「抱え込み」といって他の塾に行かないように、いろいろなシステムができあがった。学校別指導もそうですし、個別指導すら塾内にもうける、という状況になってきたわけです。何から何まで準備されている。だからお父さん、お母さんとしては、それを選べば良いということになった。

しかし、その分、子どもたちの時間はどんどん奪われることになりました。

最初週2日ぐらいだった通塾日は週3日、週4日と跳ね上がっていき、今では5日というところもあるわけで。その分、家で勉強する時間は減り、何から何まで塾任せ、というスタイルが出てきています。

私はこれが、どうも気になる。

小学生が受験をする、というのはいろいろな負担があるわけですが、それが一気に増えている。中学受験のメリットというのは、お父さん、お母さんが一緒にいてくれる分、その負担を軽減できるというところにあったはずなのが、そのメリットが減少しているのではないか、と危惧しているのです。

もうひとつ気になるのは、何から何まで準備されていると、自分で何かをすることがなくなる、自分で工夫しなくなる、という点です。私どものころは、参考書も十分でなかったから、自分で調べた。インターネットもありませんから、なんと分厚い「百科事典」を読んだものです。

それはすぐ、調べられないが、逆に言えば、苦労するから覚えるというところがある。暗記のテキストもないから、自分でカードを書いた。自分で書くから、当然、書く段階で覚えられた、というところがあります。そういう家庭や自分の工夫が必要ない、というのは確かに便利なのだが、便利すぎて、あとで苦労するところがあるのではないか。

良く私学の先生と話をして
「中学に入ったらやり直させないといかんのです。先生の前で恐縮だが、勉強の仕方がわかっていない子が多すぎる」
という話をよく聞かされる。

でも、さもありなんと、思うのです。「あれ、やれ、これ、やれ」というのは、すでにあるからやれるのであるが、すべての勉強にそういうものが用意されているとは限らない。だから中1から論外とも思えるレポートが出される。論外だから、子どもたちは大変です。しかし、その中から何となく、自分で方法論をいうものを考え出す。

「最近はねえ、どこかのホームページに答えを載せているのがあるんですよ。だから、生徒の答えがいっしょだったりしてねえ。困った時代です。」

しかし、まあ、それでもこういうことをしてくれる先生がいる学校は良いと思います。そのまま、何事もなく大学受験まで終わってしまうと、今度は準備されない実社会に出ないといけないわけでしょう。

もう少し前に苦労しておかないと、本当はいけないのではないかと私は思うのですが。

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